ハリポタ泣けるセリフランキング、上位3つ全部スネイプ先生関連なの凄くない?
(※私が個人的に勝手に決めてるランキングです)
こんにちは。先週は金曜ロードショーで二週連続ハリポタ祭りが開催されたことに触発されてこちらの記事を書きました。幼少期から温め続けたハリー・ポッターへの愛をしつこく長々と語りましたが、あんなもんじゃまだまだわたしの気はすみません。
そして本日 (2021.12.03) は連続放送2週目の「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」放映日ということで、わたしも第二回ハリポタ記事を書きます。
今回は、
・作中屈指の泣ける名セリフ3選の紹介
・ファンの間で邦訳に賛否あるスネイプ先生のセリフについての私なりの解釈
をお話したいと思います。
なるべくセリフ前後の流れがわかるように書いていくので、ハリポタファンの方は蘇る記憶による涙を処理するためにお手元にハンカチのご準備をしてからお読みいただければと思います。
特にファンではないよという方は、読んでいくうちにハリポタの魅力に憑りつかれ原作小説や映画Blu-rayを買いあさりたくなる可能性があるのでお手元にはクレジットカードを用意しておくことをお勧めします。
この先、最終巻の内容を含めたネタバレが随所にあります。結末を知らない方はご注意下さい!
私が勝手に選ぶ!ハリポタ泣けるセリフランキング
第3位 「セブルス、頼む…」―アルバス・ダンブルドア
ヴォルデモートを倒すため、ハリーと共に分霊箱を壊す旅に出たダンブルドア。目的を達成する過程で毒を受け、弱り切った状態でホグワーツに帰るとそこには死喰い人たちが待ち受けていた。ダンブルドア殺害の指令を受けていたマルフォイが殺しきれず躊躇しているところにスネイプが現れる。そこでスネイプに向かってダンブルドアが言ったセリフが「セブルス、頼む…」です。この後、スネイプの手によりダンブルドアは殺されました。
解 説
目の前でダンブルドアを殺されたハリーはこのとき「スネイプ!ダンブルドアはお前を信じていたのに!」と怒り狂います。読者としてもこの死は非常に衝撃的で悲しく、スネイプの裏切りが許せませんでした。「セブルス、頼む…」は死の瞬間までスネイプを信じ、裏切らないでくれという気持ちから出た言葉だと思いました。しかし、この言葉には深い背景があったのです。
実は、ダンブルドアの命は元々もう長くありませんでした。そのことをスネイプにのみ打ち明けていたダンブルドアは、ヴォルデモートを倒すための手段として「自身の殺害」をスネイプに依頼していたのです。自身の死により危険な杖の力を封じるため、生徒であるマルフォイをヴォルデモートから守るため、またスネイプが二重スパイだと闇の陣営に気付かせないため…理由は色々ありましたが、ダンブルドアに自身を殺すよう伝えられたスネイプは最初動揺し、断っていました。それでも必要なことだからと引き受け、結果自らの手で共に戦ってきたダンブルドアを殺すことになったスネイプ。この事実を知ってからもう一度このセリフを見たとき、その印象は大きく変わります。
全てをスネイプに託し死を覚悟したダンブルドアの気持ち、そしてその言葉を受け殺さなければならなかったスネイプの気持ち…。言った側、言われた側、どちらの気持ちを考えても涙が出てくるセリフです。
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第2位「永遠に。」―セブルス・スネイプ
ダンブルドアがハリーの運命について語った場面。ハリーが生きている限りヴォルデモートは死なないと明かされたスネイプは「それでは時期がきたらハリーは死ななければならないのか?死ぬべき時に死なせるために育ててきたのか?」と怒りを見せます。
スネイプの言葉を受け「ハリーに情でも移ったか?」と聞いたダンブルドアに、スネイプは守護霊召喚の魔法を見せます。召喚された守護霊は、ハリーの母親であるリリーと同じ牝鹿。守護霊は召喚する人の本質が顕在化されるといわれています。リリーへの愛を示すこれ以上ない証明です。
そして、スネイプの守護霊を見て驚いたダンブルドアの「これほど時間が経っていてもなおリリーを愛しているのか?」という問いに答えたスネイプのセリフが「永遠に。(Always)」です。
※このセリフについては前回紹介していたので、自記事からの引用です。
解 説
スネイプのリリーへの愛の深さを感じるシーンです。スネイプの守護霊は元々別の形でしたが、リリーの死後に牝鹿へと変化しました。リリーの死がスネイプの心に与えた影響の大きさがうかがえます。
そもそもスネイプは元々ヴォルデモート側の人間でした。しかし、闇の帝王が倒される予言を防ぐためにヴォルデモートがハリー一家を標的にしたことで、愛するリリーの身に危険が及ぶことを恐れひそかに裏切りダンブルドアを頼りました。そして、リリーの保護を条件として危険な二重スパイの役目を負うことを受け入れたのです。ところがリリーはハリーを護って亡くなってしまいます。絶望したスネイプは「リリーと同じ目をしたハリーを護るよう」ダンブルドアに諭されます。葛藤がありながらも「自分がハリーを守るという事実」を誰にも明かさないということをダンブルドアに約束させた上で引き受け、自らが死ぬ瞬間までその役目を果たし続けました。ただ、リリーへの愛情から。
このセリフはハリーが17歳の年の出来事なので、リリーの死後17年が経過してもなお想い続けていたことになります。何の見返りもなく、誰にも感謝されず、むしろ自身を危険な立場に置くことにしかならないのに…。スネイプの深い愛情と献身、そして後悔を感じる一方で、報われることのない想いにせつなくなるセリフです。
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第1位「Look…at……me…」―セブルス・スネイプ
セリフ登場シーン
最後の分霊箱を破壊するためにハリーが向かった先にはヴォルデモートの手により死を迎える寸前のスネイプがいました。スネイプは自身の記憶を放出しそれを見るようハリーに託し、最後の力をふり絞って「Look at me」と声をかけます。ハリーの緑の目がスネイプの黒い目をとらえます。父親に似た外見の中で唯一、母親のリリーとそっくりであるハリーの緑の目。その目を見ながらスネイプは死んでいきます。
その後、ハリーは受け取った記憶から、スネイプが最初からずっとハリーの味方だったことを知ります。
解 説
幼少期から抱いていたリリーへの愛と、闇の陣営についた自身が招いたリリーの死。リリーを守れなかった後悔と絶望を抱えながらも、リリーの子であるハリーを守るために危険な立場に身を置くことを決意したスネイプ。
表向きにはヴォルデモートの腹心として動き、その裏でダンブルドアと共にヴォルデモートを倒すための体制を整えてきた彼の半生は、ダンブルドア以外に理解者も味方もいない孤独で危険なものでした。自分の人生を見返りの無いリリーへの愛の為だけに捧げ、死の瞬間まで背負った役目をやり遂げたスネイプ。そんな彼が最後の最後にやっと自分自身のために口にした願いがこの「リリーと同じ目を見せてほしい」という言葉であり、それが彼の最期の言葉となりました。
最期の言葉というだけでも泣けるのに、ひたすらにリリーへの愛のために捧げたスネイプの人生がこの一言に集約されているようで…間違いなく作中で一番読者の涙を生んだセリフだと思います。
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スネイプのセリフ「Look at me」の邦訳について
日本語版小説での訳
実は、このセリフの翻訳については一部のファンの間で賛否が分かれています。
松岡佑子さんの邦訳では「僕を見てくれ」と訳されています。
あとがきにてこの部分の訳について悩んだことが書かれていて、かなり気を使って翻訳したことがうかがえます。たしかに訳によって大きく印象が変わるシーンなんですよね。
ファンの間で否定的な意見があるのは、「僕」という一人称についてです。
「僕を見てくれ」というセリフから受ける印象
スネイプの普段の一人称は「吾輩」で、回想シーンで幼少期~学生時代にリリーと過ごしていた頃の一人称は「僕」でした。
その背景を知った上で「僕を見てくれ」というセリフを見ると、スネイプからリリーへ向けた言葉のような印象を受けますよね。死の間際にハリーにリリーの面影を見て、生涯リリーへ伝えることが叶わなかった「自分を見てほしい」という気持ちがこぼれたかのような…。わたしはこの訳から受ける印象も好きです。
ですが、その解釈だと「死の瞬間の朦朧とした意識でリリーの面影に話かけた」ような印象が強いですよね。
「私を見てくれ」というセリフだった場合の印象
これが「私を見てくれ」もしくは「こっちを見てくれ」だとどうでしょう?
自身の死を悟り、ハリーに記憶を託すことで伝えなければならない情報を渡すこともできたスネイプ。やるべき役目をまっとうし、長く孤独だった生を終える瞬間に「最後は生涯唯一愛したリリーの面影を見て逝きたい」と考えた。そのためにハリーに目を見せるよう伝えた…そんな印象になりませんか?
こちらの解釈だと「スネイプは死の間際にも意識をしっかり保っていて、自分の意志でハリーの目の中にいるリリーの面影に見送られることを選択して死んでいった」というような印象になります。
「スネイプの人物像」をそれぞれの訳から解釈・比較してみる
一人称が「僕」の場合、「私」の場合の印象を考えたところで、今度はそれぞれのセリフから解釈できるスネイプの人物像について考えてみたいと思います。
「僕を見てくれ」のスネイプ
リリーへの愛のために生き、死の瞬間までリリーのことだけを考えていた「愛に生きた人」というような人物像に思えます。生涯最後の言葉は愛する人への言葉だったということにもなりますね。朦朧とした意識の中で愛する人を見て、伝えたかった思いが最期の言葉となったというのはせつないですが、死の間際に少しだけ幸せを感じられたのではないかという気もします。
「私を見てくれ」のスネイプ
死を受け入れ、最期の瞬間に目にうつすものを「ハリーの中にあるリリーの目」にすることを決め、自身が満足する死の形を整えるための手段として最期の言葉を発したような印象を受けます。突然訪れた死だったにもかかわらず、まるで死に方を自分で選択したかのような「強く冷静な人」という人物像に思えます。役割を無事に終え、愛する人の面影に見送られる形での死を迎えたことに満足して死んでいったと思うこともできます。
それぞれの人物像を比べてみると、
「僕」の方は思考の中に”愛”が占める割合が多くやや感傷的で情熱的な人物像
「私」の方は愛もありつつも死の瞬間まで冷静な行動をとる理知的な人物像
このような違いがあります。
それまで作品中で描かれてきたスネイプの印象と一致するのは後者ですが、死の間際というイレギュラーな状況下ということを考えれば前者のような人間味が見えたと考えるのもおかしくないと思います。
「ハリー・ポッター」シリーズ全体のテーマ
ハリーポッターのシリーズ全編を通したテーマのひとつは「愛」です。
スネイプの最期の言葉にまつわるシーンには「スネイプのリリーへの愛」と「憎いジェームズの子であると同時に愛するリリーの子であるハリーに向けた複雑な愛憎」が描かれています。
リリーはもうこの世にいなく、彼女のために行動したところで見返りがあるわけでもない。その上ハリーは憎むべき相手の子供でもある。それでもリリーのために長い間自らを辛く危険で孤独な境遇においたスネイプからは「無償の愛」とでもいうべき深い愛情を感じますよね。
というわけで、「Look at me」は作品テーマにもかかわる重要な場面でのセリフです。スネイプの最期の言葉でもあるので、その印象を左右するとなれば色々な意見が出るのも納得ですね。
翻訳された物語に訳者の思考が反映されるのは仕方ない
私としては物語は読む人それぞれに色々な解釈があるので、作者が解説した場合以外は正解は無いと思っています。無いというか、読んだ人の数だけ正解がある…みたいな。(なんだかかっこいい言い回しですね!)
同じものを読んでも受ける印象は人それぞれなので、翻訳された時点で「翻訳者の解釈の影響が少なからず混ざってしまう」のは仕方のないことだと思います。
それを最小限に抑えるのが訳者の仕事だろ、という考えもあるとは思いますが、そこを抑えようとするとどうしても平坦で無難な単語ばかりで構成することになってしまう気がするんですよね。物語としてのおもしろみが減ってしまうのでは無いでしょうか?
というわけで、わたしとしてはこの翻訳に対して否定的な気持ちはありません。が、作品テーマにも関わる重要なセリフであり訳によって受ける印象がガラッと変わる今回のような場合は、あとがきにちらりと「英語と違って日本語には多くの一人称があるのでどれが適切が悩んだ」というような一文があればなお良かったかなと思います。英語原作を読めない読者にも想像の余地を与えられるように。
わたしは幼いころから海外児童文学が大好きで、「ナルニア国物語」「飛ぶ教室」「モモ」などを好んで読んでいました。そんな中でも松岡さん訳の「ハリー・ポッター」はフォントや言い回しにエンタメ色が強く、読んでいてワクワクしたことを覚えています。本を読んで受け取る印象は、読んだときの年齢によって大きく変わることが多いです。それを考えると、子供の頃に松岡さん解釈の訳で「僕を見てくれ」の感動を味わい、大人になって原語の「Look at me」の解釈の余地に気付くというのも良いのではないかなと思います。ハリー・ポッターは何度読み返しても、子供が読んでも大人が読んでも最高におもしろい物語なので!
私の中での「Look at me」の解釈は
ちなみにわたしの中でのスネイプの最期の言葉は「私を見てくれ」で、死の間際まで冷静な思考だったスネイプが最後にリリーの目の面影を見ながら逝くことを自ら選択したんだと思ってます。
それまで愛のためにひたすら自分を犠牲にして献身を捧げてきた彼が、役目を全て終え死を迎える前に一度だけ「愛する人の面影を感じたい」というささやかな願いをした。わたしとしては、そこがこのセリフの涙を誘う点だと思います。
また、スネイプは自分が「ハリーを守ること」を誰にも明かさないでほしいとダンブルドアに約束させていました。ダンブルドアからは「君のもっとも良いところを明かすなと?」と言われたにもかかわらずその思いは頑なでした。わたしはそこに、ハリーに対する複雑な感情が読み取れると思いました。生涯許せない相手であるジェームズへの嫌悪。それを上回るリリーへの愛と献身。最期までハリーを守っていた事実を誰にも明かさなかったということは、リリーへの愛情と同じようにその複雑な感情もまたスネイプの中に在り続けたのだと思います。
魔法界最強のヴォルデモートを相手にしても自身の内心を悟らせることが無かったほどに感情を隠すのが上手いスネイプです。死の間際の最期の瞬間だったとしても、感情を表だって出す姿は見せなかった気がします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
最期に、今回惜しくも選定から外れてしまった「ハリポタ泣けるセリフランキング」の第4位を発表しておわりにしたいと思います。
(おまけ) 冒頭で発表したランキングの4位は…
「考えてくれないか…もし君が…別の家族が欲しいと思うなら…」―シリウス・ブラック
というわけで、モジモジモゴモゴしながらハリーに「一緒に暮らしてほしい」と誘ったシリウスおじさんのセリフが第4位でした。シリウスはそれまで無実の罪で最悪の監獄アズカバンに収監されていて、彼が最後までハリー一家の味方だった事実が誰にも知られないまま「ハリーの父と母を死に追いやった張本人」とされてきました。
その誤解をやっと解くことができ、親友の息子であるハリーへの愛情を示したこの場面。ハリーはとても嬉しそうでした。読者としても、ハリーが養い親の元で不遇な生活を送っていることを知っているので「やっとハリーを家族として愛してくれる人があらわれた!」と本当に嬉しかったです。しかし、この約束は果たされることなく、シリウスおじさんは闇の陣営との戦いの中死んでいきました…。
このセリフ自体はとても幸せな気持ちになる嬉しい言葉なのに、この言葉から数年後の結末を知っているからこそせつなくなってしまうセリフです。
気持ち的には3位のダンブルドアのセリフと「泣ける度」に差はないのですが、ランキングに並べてしまうにはあまりにもシリウスおじさんがモジモジしすぎていてプロポーズのような雰囲気をかもしだしてしまうのでなんか違うと思って選外となったのでした。
▼このシーンを小説で見る
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ではまた次回。
是非ほかの記事も読んでいただけたら嬉しいです。